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家族に会えたら…

今日、イラク人の友人に連れていってもらったイラク人家族のアパートは、クリスマスツリーやリース、壁にはキリストの肖像画がかけられていた。この家族はクリスチャンだ。2年前にエジプトにやってきたそうだ。イラク戦争後、わりとすぐに移住をしたらしい。ただ、お父さんだけはバグダッドに残ったのだそうだ。

バグダッドの中心部にあるパレスチナホテルは世界中のメディアが集まるプレスセンターとして有名だったが、その裏手のチグリス河畔には教会も多く、私の借りていたアパート周辺にもクリスチャンは多かった。この家族もそのあたりに住んでいたという。

17歳の息子は「カイロの方がいいよ。イラクに帰りたいかって?どうだろう…わからない」と言った。そうかもしれない。もう2年もここで生活をしているから、今さらイラクでの生活を考えられないのかもしれない。のんびりと、幸せそうに、家族で楽しく笑っていた。10歳の娘は、ちょうど家庭教師が来ていて、「社会の勉強を習っていたの」と英語で言った。

この団地の一角だけでも12、13のイラク人家族が住んでいるらしい。この家には、近所のイラク人がよくおしゃべりをしに集まってくるらしく、この時も近所のイラク人のおばさんが娘とやってきた。このおばさんはイラクでエジプト人である夫と知り合い、結婚を機にカイロにやってきたそうだ。27年もイラクへは帰っていないそうだが、イラク方言は健在であった。ちなみに、誤解があるといけないので一応付け加えると、このおばさんと娘はバリバリのイスラム教徒。もちろん、私の友人もイスラム教徒。

つけっぱなしのテレビはイラクのシャルキーヤ放送で、古いドラマをやっていたり、ニュースが流れている。

「あらら、サマワよ。確か、日本軍がいたんじゃなかったかしら?」

テレビの画面は戦闘の様子。「陸自は撤退したけど、何があったの?」と聞いてみる。

「マフディ軍とイラク警察が戦闘しているのよ」

アラブコーヒーを振舞ってくれたお母さんは、ソファに座ると編み物を始めた。そこにいたみんな、このお母さんの手編みのセーターやマフラーを持っていた。今、編んでいるのは黒いセーターらしいが、「それはダンナさんへのクリスマスプレゼント?」と聞くと、隣にいた近所のおばさんが、「それは、私のよ!」とすかさず答えて、大声で笑った。

ダンナさんはというと、前述のとおりイラクに残っていて、毎月家族に送金してくれているのだそうだ。昨年のクリスマスのように、今年もお父さんがイラクからエジプトに来るはずだった。今回、お父さんはシリアまで出てきてエジプトビザを申請していたらしいのだが、ほかのイラク人同様、却下されてしまった。そんなわけで、今年のクリスマスはエジプトにいる母と子供たちが、お父さんに会いにシリアまで行くことになったということだ。

ここ最近、イラク人の家族離散の話はあまりにも多い。さっき来たメールも、「脅迫されていて、自宅に戻ることができない。家族にも会えない。殺される…。僕を受け入れてくれる外国がない。助けてほしい」という内容だった。生き延びるために家族離散するしかない、と言った友人もいた。この先、イラク人はどうなるんだろう?
by nao-takato | 2006-12-25 00:48 | イラク全体

リアルタイムでイラクの今をお知らせする為の公開日記


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