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ラマディレポート3(5月11日〜5月13日)

□□□□□□□□□深夜の家宅捜索□□□□□□□□□

2006年5月11日
その日はラマデイ中で銃撃の音が響いていた。
午前9時頃、F16戦闘機が再び駅を爆撃した…そして、
戦車が鉄道で働いている人々の家を砲撃し…3人の民間人が
殺された。父親と2人の子どもたち…けが人が数人…。
破壊された家だけが残った。

2006年5月12日
米軍はレジスタンスに攻撃された。攻撃されたのは、農業大学
にあった陸軍基地だ。レジスタンスは機関銃と迫撃砲で基地を
攻撃した。そのため米軍はその夜、基地の近くの家を攻撃した。
彼らは、通りに戦車でやってきて、たくさんの人々を逮捕して、
多くの家を家宅捜索していった…。

どんな家宅捜索がされるのかというと…。
普通、米兵は深夜12時過ぎに戦車に乗ってやってくる。
彼らは、自分たちがレジスタンスだと思った人間は誰でも逮捕
する。街の中を走っていて、家の中で動きまわっている人影が
見えると、どの家だろうと逮捕する…。
つまり逮捕の事例で最も多いのは、米兵が、深夜に起きている
人間を見咎めたときだ…!
それで、我が家も含めこの地域に住む多くの人間は音を立て
ないように自分たちの部屋に隠れ、子どもたちを静かにさせて
ベッドに連れていく……そのようなことが毎晩、暗闇の中で
行われる。どこの家の発電機も、ガソリンの高騰で燃料不足に
なり、ほんの数時間しか動かすことが出来ないからだ。

家宅捜索のあとは次のような結果が待っている:
1−破壊されたドアと窓。
2−壊された家具とテレビ、冷蔵庫などの電気製品。
3−割られた車のガラス。
4−ショックを受けている子供と女性たち。

深夜、どこの家でも行われる家宅捜索がどのようなステップを
踏むかというと:
1−米兵は、家を取り囲み、しばらく見ている。
2−窓からソニック爆弾を投げ入れる…「ソニック爆弾」とは、
高周波の爆発音で人々(家族)にショックを与える。家の中
にいてこの爆弾を受けると、誰でも少なくとも20分は音
が聞こえなくなる…。赤ん坊にとっては、生涯耳が聞こえ
なくなるという大きなリスクがある。音爆弾。パレスチナ
でも使われている兵器。脳と神経が侵される。
3−米兵は開いているさまざまな場所(窓、ドア)から家に
入るので、ドアがバリバリッとものすごい音をたてる…。
寝室と台所など、どこもかしこも。
4−彼らは大声で叫び、無理矢理全員(女性、子供さえ)を取り
おさえ、手をしばり、真っ暗な狭い一部屋に押し込める。
5−米兵は捜索を始める。彼らはカギのかかったキャビン、
ロッカー、どんなものでも壊してしまう……。
6−家の中に兵器、爆弾がないかを確実にチェックした後、
米兵は家族から情報を集め始める。ほとんどの場合、
通訳はいない。それで、彼らは基地で尋問するために
男性と少年を逮捕するようだ。
7−終わった後、彼らは煙爆弾を外から投げ込み、逮捕した
人々を連れて戦車に乗って基地へ戻る。

我が家は、深夜の家宅捜索のときこの経験を何度もした…。
僕が米兵の通訳を出来ないときは、家族にとっては最悪だ。
何回も、僕は米兵から(僕の家を家宅捜索するとき)良い
給料を払うから米軍の通訳にならないかと誘われた。
でも、僕は断った。彼らが僕の仲間を殺している間は、
イラクでの米軍の戦争犯罪の仲間になってしまうと思うから。
米兵は、自分たちの銃でたくさんのイラク人を殺し傷つけた
ことを理解する必要があるし、彼らは皆、自分の問題として
イラクの惨劇をシェアするべきだ。
さらに言うならすべてのイラク人が被害者で、その一部が
イラクの惨劇を止めるために抵抗戦士として戦っているのだ
(と、多くのイラク人は思っている)。

2006年5月13日
今朝、米軍は狙撃兵の拠点にする為にさらに多くの家を占拠
しようと攻撃を始めた……そして、たくさんのレジスタンスが
これを阻止しようと銃を持って現れた。
米軍は戦車、ヘリコプターなど彼らが持ちうるすべての力を
使った。そして多くの家を破壊し、多くの人々(犠牲者の
大部分は民間人)を殺した……。
今回、米軍は、狙撃兵の拠点として僕の家を選んだ…。

深夜3時10分、家族が眠っている間に、米兵は門を壊し、
僕の家を占拠しようとしたのだ…。
彼らが庭の背後に来たとき…僕は目が覚めた…そして、歩いて
くる足音を聞いた……。数分後、我が家の2つのドアが壊され、
米兵たちが中に入ってきた…。

僕は部屋から飛び出し、いくつかの英単語で自分がいることを
彼らに伝えた。突然寝室に入ってくるアメリカ流のやり方に、
家族をびっくりさせないようにするためだ。
米兵は叫んだ。
「止まれ……後ろを向いて手を壁につけろ……!」
彼は、僕が何をしていたかと尋ねた。もう一人の米兵が僕を
チェックして、次にこう言った。
「彼は問題ない」
彼は僕をじっと見ている将校に向かって言った……。
「まったく。英語が話せるイラク兵が3人しかいない」
彼らは互いにそう言い合っていた。

「OK、ここの仕事が終わるまで米軍を助けないか?
 我々は、この家にどんな人間が住んでいるのか知るために、
 お前が必要だ」
他の兵士が僕の周囲を歩き、将校が尋ねた。
本当に暗かったので彼らが見えなかった。しかし、彼らは
ヘルメットについた器具で僕を見ていた…僕は、将校が僕の
足元を見るために石油ランプを持っていることに気がついた。
それで、彼が話している間、僕は彼を見た。
「僕たちを傷つけないでください。僕たちは平和な家族で、
 ここにいるのは子供、女性、老人(僕の父)です…捜索を
 するなら僕に家族を起こさせてください……」 
「OK、急げ。ここに住んでいるすべての人間をこの部屋に
 連れてこい」
将校は僕の小さな部屋を指し示した。

僕は両親を起こすために急いだ。そして彼らに冷静に伝えた。
「米兵がここにいる。だけど皆大丈夫だから…彼らは僕たちに
 ひとつの部屋に集まるように言っている」
僕は父を恐がらせないように穏やかな声で言った…。
父は心臓に持病があったのだ。
「これから姉の部屋に行って、彼女を起こし、僕の部屋に連れ
 ていく」

2人の米兵が何も言わずに僕についてきた。彼らは僕が命令に
従うので安全だと思ったらしい……。子ども部屋で甥が寝てい
るのが見えた。5歳になるムスタファは病気で熟睡していた…。
僕は彼を抱き、他の子どもたちの部屋に連れて行った。

こうして僕はすべての家族を起こし、家族全員ひとつの部屋に
集まった。米兵は家族全員の手を縛り始めた…僕は彼を止めた。
「どうかやめてください…貴方はドアにカギをかけるでしょう。
 だったら手を縛らないでください。ここには子どもがいます
 …子どもたちにはこれはつらいことです…お願いだから
 やめてください」
僕は将校にそう言った。
「OK、ドアにカギをかけろ…これで十分だろう」
将校は言った。
「この家に18人も住んでいるのか???どうやって?」
将校は僕に尋ねた。
「僕たちには選べないのです…これが僕たちができるすべてで…
 他に住む場所もないし…でもいいんです…。
 僕たちが皆で住むのには十分な家なんです」
僕は笑って答えた…彼らをリラックスさせるように。
「良い子だ…家族を大事にしろよ」
彼は笑いながら言った。
「いや…僕は子どもじゃないです…大人です…ひどいなぁ」
僕は彼に言った…冗談っぽく。
「おお、ごめんごめん…いくつだ?」
「30歳です…」
「おお、若く見えるなぁ…30歳?本当か?」
「えぇ、本当ですとも…若く見えるのは僕のガールフレンド
 にとってはいいことでしょ…ね?」
「ハハハ…そうだな…お前は最高だ」と将校は笑った。
「彼女はステキさ…でもあなたには関係ないことだけど…
 OK…??」
僕は笑って答えた。
「OKOK…さぁ、家族と一緒に部屋に入れ。我々の仕事が
 終わったらドアを開けよう…さぁ、どうぞ入ってください」
将校は言った…。
僕は黙って部屋に入った…一人の米兵がドアのカギをかけた。

そして僕たちは暗闇の中に残された。
最初、僕は米兵たちが捜索を終えたらすぐに家を出ると思って
いた。しかし、彼らは翌朝の午前11時20分までいたのだ…。
そして、僕たちは暗い部屋に6時間いた…最初の2時間はとても
暗くて暑かった…。

ムスタファがトイレに行きたがって問題が始まった。
僕は見張りの兵士に彼をトイレに行かせてくれるように頼んだ。
「俺たちには出来ないんだ…出来るのは米兵だけさ…。
 俺たちは彼らの命令なしでは何にも出来ないんだ」
と、イラク兵が僕に言った。
「今すぐ彼らにOKを聞いてきてくれ…
 病気の子どもが今すぐトイレに行きたがっているんだ」
「やってみよう……俺は英語が出来ないんだ、手まねでやって
 みるよ…いいかい?」 イラク兵は答えた。
「OK…OK」
彼は階段を上がっていき、数分後に一人の米兵と戻ってきた。
「どうした???」
米兵はカギのかかったドアの向こうで僕に尋ねた。
僕は甥の説明をした…それから彼はドアを開けた。
「OK、一人で行ってこい」米兵は言った。
「いや、彼は病気だから無理です…病気で歩けない。
 足が弱っているんです」
「OK…OK…お前一緒に行け。お前(イラク兵を指差して)、
 そいつらを見張れ」
米兵は僕とイラク兵に言った。
「彼は何て言ったの??」
イラク兵が僕に聞いたので、僕は彼に説明した。
……それから僕たちはトイレに行き、イラク兵は僕たち、
つまり僕と5歳のムスタファに銃を向けていた。
誰もがトイレにいくたびにこれが繰り返された…。

僕たちは暗くて暑い部屋で人質として6時間過ごした。
次のメッセージでは何が起きたかを話すね……。

……ありがとう。

(次号に続く)
(日本語訳:細井明美)
by nao-takato | 2006-06-14 01:16 | ラマディ/ファルージャ

リアルタイムでイラクの今をお知らせする為の公開日記


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