8月18日 報道の見えない壁
2005年 08月 18日
8月6日。イラクからやって来たジャーナリストと一緒に報告会をした時、彼は「ハディーサで米軍がものすごい空爆をしていた」と言っていた。次の朝、イラクから「ハディーサが大変だ。民間人がたくさん死んでいる。友人も家の窓から外を覗いたら、撃たれた」という連絡が入った。しかし、同時にチェックしていたインターネットニュースでは、米兵が死亡したというニュースしかなかった。
8月13日。ロイターのニュースを見た。「イラク中部のラマディ近郊で12日、米軍偵察部隊が攻撃を受けたが、住民によると、攻撃を受けた米軍部隊が発砲し子供8人を含む市民15人が死亡、17人が負傷した。しかし、米軍は銃撃の事実は否定している。ラマディ近郊のナサフ住民によると、モスク付近を米軍の偵察部隊が通り過ぎた際、米軍車列近くで路上爆弾が爆発。爆弾爆発後、米軍部隊はモスクでの礼拝を終えて出てきた人々に向け発砲したという(ロイター)」
8月17日。バグダッドで連続爆破。テレビは最後に「スンニ派武装勢力がシーア派住民を狙った犯行とみられる」と付け加える。
一頃、なんでもかんでも十把一絡げに「武装勢力」とされていたのが、最近は「スンニ派武装勢力」というのが多い。そして、「シーア派住民を狙って」というのが必ずセットでついている。けれど、私が知りうるところのイラク人からはそういった構図というのがどうしても見てとれないし、感じられない。彼らは自分たちイラク人をこう説明する。「スンニ派がシーア派住民を狙ってというけど、実際の犠牲者はシーア派だけじゃない。そこにはスンニ派もクルド人もクリスチャンも含まれているはずなのだ。だって、イラクは分かれて住んでいない。代々、混じり合ってきたし、住んでいるところも混じり合っているのだ」。
イラクの隣国ヨルダンではどう報道されているのだろう?あそこでは、BBC(イギリス国営放送)をはじめとする欧米系メディアもアラブ系メディアも、いつでも見られる。ヨルダンに滞在中の日本国際ボランティアセンターの原さんに聞いてみた。以下、原さんからの返信メール抜粋。
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「スンニ派武装勢力がシーア派住民が集まるバスターミナルを狙った」と聞いて、まずは目がテンになりました。BBCにしてもアルジャジーラにしてもそこまでは言っていないはずなのに誰がそういうステレオタイプの脚色をつけるのでしょうか?
確かに現場はアマラやバスラなど南部シーア派の多く住む地域へ向かうバスの発着所で、サドルシティにも近いところですから、犠牲者の多くがシーア派の人々であった可能性はありますが、クルド地域のスレイマニアやアルビル方面の発着所でもあります。
昨晩の段階でBBCでは「イラクのTV局の報道によれば」として、容疑者が拘束されたような報道が一時されていますが、最終的に真偽のほどは確かでありません。(BBCの報道も、最後の爆破があったアルキンディ病院の位置をヤルムーク病院の位置と間違えたりしていますから当てになりません。)
「スンニ派武装勢力」と呼ぶのは多分「ザルカウィ派」の含みがあって呼んでのであればある程度は合っていると言えます。ただそれをシーア派と対比させるのは誤解の元だと思います。
知り合いのイラク人(在アンマン)曰く、「犯人が一般のイラク人でスンニ派というのは信じられない。これだけ巧妙な作戦が実行できるのは個人でできるものではなく、イラク軍か警察か、あるいは米軍だろう。あるいはザルカウィ派など、憲法の制定過程を邪魔してイラクを混乱に陥れようという外国からのグループの仕業だろう」 と言っています。
14日付けワシントンポストの報道では、ラマディで少数派のシーア派を追い出そうとしたザルカウィ系グループに対して反発した地元のスンニ派の人々が蜂起して戦ったという報道があります。タイトルもそのものずばり「スンニ派イラク人がシーア派を守って戦闘」です。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/08/13/AR2005081301209.html
スンニ派とシーア派の対立を煽る報道に目を奪われていると、こうした事実に目が届きにくくなると思います。
原 文次郎@アンマン
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内紛を煽る風はあちこちから吹いてきている。以前にここで紹介したハリドの拘束劇からもわかるように、中央からだって吹いてきているのだ。私たちは報道を見聞きする時、「報道の見えない壁」があることを常に意識する必要がある。
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★お知らせ★
郵便振替口座「イラク支援ボランティア 高遠菜穂子」の口座より、イラク「命の水」支援プロジェクトの井戸掘り資金として、100万円を8月1日に送金いたしました。
※8月1日当初、イラク「命の水」支援プロジェクトの郵便振替口座が開設はしていましたが、稼働していなかったため、直接、海外送金いたしました。
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8月13日。ロイターのニュースを見た。「イラク中部のラマディ近郊で12日、米軍偵察部隊が攻撃を受けたが、住民によると、攻撃を受けた米軍部隊が発砲し子供8人を含む市民15人が死亡、17人が負傷した。しかし、米軍は銃撃の事実は否定している。ラマディ近郊のナサフ住民によると、モスク付近を米軍の偵察部隊が通り過ぎた際、米軍車列近くで路上爆弾が爆発。爆弾爆発後、米軍部隊はモスクでの礼拝を終えて出てきた人々に向け発砲したという(ロイター)」
8月17日。バグダッドで連続爆破。テレビは最後に「スンニ派武装勢力がシーア派住民を狙った犯行とみられる」と付け加える。
一頃、なんでもかんでも十把一絡げに「武装勢力」とされていたのが、最近は「スンニ派武装勢力」というのが多い。そして、「シーア派住民を狙って」というのが必ずセットでついている。けれど、私が知りうるところのイラク人からはそういった構図というのがどうしても見てとれないし、感じられない。彼らは自分たちイラク人をこう説明する。「スンニ派がシーア派住民を狙ってというけど、実際の犠牲者はシーア派だけじゃない。そこにはスンニ派もクルド人もクリスチャンも含まれているはずなのだ。だって、イラクは分かれて住んでいない。代々、混じり合ってきたし、住んでいるところも混じり合っているのだ」。
イラクの隣国ヨルダンではどう報道されているのだろう?あそこでは、BBC(イギリス国営放送)をはじめとする欧米系メディアもアラブ系メディアも、いつでも見られる。ヨルダンに滞在中の日本国際ボランティアセンターの原さんに聞いてみた。以下、原さんからの返信メール抜粋。
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「スンニ派武装勢力がシーア派住民が集まるバスターミナルを狙った」と聞いて、まずは目がテンになりました。BBCにしてもアルジャジーラにしてもそこまでは言っていないはずなのに誰がそういうステレオタイプの脚色をつけるのでしょうか?
確かに現場はアマラやバスラなど南部シーア派の多く住む地域へ向かうバスの発着所で、サドルシティにも近いところですから、犠牲者の多くがシーア派の人々であった可能性はありますが、クルド地域のスレイマニアやアルビル方面の発着所でもあります。
昨晩の段階でBBCでは「イラクのTV局の報道によれば」として、容疑者が拘束されたような報道が一時されていますが、最終的に真偽のほどは確かでありません。(BBCの報道も、最後の爆破があったアルキンディ病院の位置をヤルムーク病院の位置と間違えたりしていますから当てになりません。)
「スンニ派武装勢力」と呼ぶのは多分「ザルカウィ派」の含みがあって呼んでのであればある程度は合っていると言えます。ただそれをシーア派と対比させるのは誤解の元だと思います。
知り合いのイラク人(在アンマン)曰く、「犯人が一般のイラク人でスンニ派というのは信じられない。これだけ巧妙な作戦が実行できるのは個人でできるものではなく、イラク軍か警察か、あるいは米軍だろう。あるいはザルカウィ派など、憲法の制定過程を邪魔してイラクを混乱に陥れようという外国からのグループの仕業だろう」 と言っています。
14日付けワシントンポストの報道では、ラマディで少数派のシーア派を追い出そうとしたザルカウィ系グループに対して反発した地元のスンニ派の人々が蜂起して戦ったという報道があります。タイトルもそのものずばり「スンニ派イラク人がシーア派を守って戦闘」です。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/08/13/AR2005081301209.html
スンニ派とシーア派の対立を煽る報道に目を奪われていると、こうした事実に目が届きにくくなると思います。
原 文次郎@アンマン
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内紛を煽る風はあちこちから吹いてきている。以前にここで紹介したハリドの拘束劇からもわかるように、中央からだって吹いてきているのだ。私たちは報道を見聞きする時、「報道の見えない壁」があることを常に意識する必要がある。
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★お知らせ★
郵便振替口座「イラク支援ボランティア 高遠菜穂子」の口座より、イラク「命の水」支援プロジェクトの井戸掘り資金として、100万円を8月1日に送金いたしました。
※8月1日当初、イラク「命の水」支援プロジェクトの郵便振替口座が開設はしていましたが、稼働していなかったため、直接、海外送金いたしました。
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by nao-takato
| 2005-08-18 20:56
| イラク全体