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7月31日 命の水

海外で生水を飲むってのは敬遠されがちだが、私はバグダッドのホテルで水道水をよく飲んだ。これが、わりとうまい。ペットボトルの水よりイケルのだ。一度、滞在先のホテルで知人が日本から持ってきた水質試験紙を使って調べたことがあった。劣化ウランの重金属は別として、細菌に関しては問題なしだった。まぁ、問題があれば、私にも問題が発生しているはずだ。しかし、郊外の地域では試験紙が真っ赤になったところもあった。病院は、その飲料水で下痢症状を起こした子どもたちでいっぱいだった。赤ちゃんは粉ミルクを汚水で溶いたものを飲んでるからなのだが、中には命を落としてしまう例も少なくなかった。それからしばらくすると、浄水場が稼動し始めてこれは徐々に改善の方向にあった。実際に「水を運んでください」と浄水場にお願いに行ってみると、機械が作動し、現場復帰した職員たちがトラックできれいになった水を市内に運んだり、緊急用にパッキング作業をしていた。

イラクでは、特に暑い夏の期間、客人が来るとまず冷たい水を振舞う。道を尋ねるために立ち寄った所でも、家からポットとコップを持ってきて車内にいる全員にすかさず冷たい水が差し出された。家に招き入れられてからは、砂糖たっぷりのシャイ(煮出した濃い紅茶)。空っぽになった刑務所に不法占拠している家族を訪ねた時も、配給された砂糖をふんだんに入れたシャイを、その家の娘さんが暗闇の中から恥ずかしそうに運んできてくれたこともあったが、それと一緒に水も差し出された。さすがに、こういう場合はいただくフリをすることになるのだが、その好意はうれしい。

裕福なご家庭になると、缶ジュースが出てくる。外国人だと余計に奮発するのだろうか。着色料たっぷり系の炭酸飲料が出てくるのだけど、私は炭酸はビールしか飲まない人だったので、ちょっと苦労した。でも、次第に慣れてきて、そのうちに「あぁ、ジュース飲みたい」なんて思うようになっていたんだから驚いた。で、この缶ジュースが出されても水がチェイサーとして出てくることがよくある。車で遠出をする時などは、自宅でガンガンに凍らせた水を何本も積み込む。車内で段々に溶けてきて、みんなでまわし飲んだり、オーバーヒートしそうなエンジンにかけて冷やしたりする。なんせ、暑さが半端じゃないから、とにもかくにも、水。

ちなみに、その他の「アラブのおもてなし」としては甘いお菓子がある。私も知人宅を訪ねる時や泊まりに行く時は、いつもアラブスウィーツを買ったものだ。私が拘束を解かれた時、アメをもぐもぐしていたのはつまり、「アラブのおもてなし」を丁重にお受けしたことにある。インターネットの世界では「モグコ」と命名されているようだが、これで1つアラブの習慣をみなさんにお伝えできた、ということにしよう。

チグリスユーフラテスの2つの大河を抱えるイラクは、渇水なんてまるで縁がなかった。ところが、今、前代未聞の水不足に悩まされている。ろ過、浄水というのは水があればできるが、浄水施設が爆破されてからは水が出てこない日の方が多いのだ。こうなると、悩むというより現実は「息の根を止められてる」と言った方がいいかもしれない。

イラクホープネットワークでは、現在これを緊急課題にしている。イラク水支援プロジェクト(仮称)だ。劣化ウランや水質、その調査に関してはいろいろと意見や情報が交わされている。命の水だ。どうにかしなければと思っている。

空から降ってくるのは爆弾ばかり。地面で狂い咲きするのも爆弾ばかり。これ以上、イラクの人の命を枯らしてなるものか。
by nao-takato | 2005-08-01 00:25 | 支援/プロジェクト

リアルタイムでイラクの今をお知らせする為の公開日記


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