10/10メンタルヘルスデー "見えない傷"を抱えた避難民たち
2017年 10月 12日

2014年1月にIS危機が起こり、最初はアンバール州から避難民が押し寄せます。
6月にはモスルから、8月にはキリスト教徒、ヤジディ教徒の虐殺が相次ぎ、
クルド自治区には避難民が押し寄せました。どこの病院もけが人や病人であふれました。
クルド自治区以外では、
アンバール州やバグダッド州にも多くの避難民がキャンプなどにいます。
先ほど現地と連絡を取りましたら、
アンバール西部からの新たな避難民も連日増えているとのことでした。
イラク全体の国内避難民(IDP)の数は380万人までいきました。
帰還した人たちも少なからずいますが、
クルド自治区(ドホーク州、アルビル州、スレイマニヤ州)には今もIDP170万人。
そのうち72万人以上がドホーク州にいます。

先日、ドホーク州保健局局長とお話してきました。
2015年に形成外科ミッションで大変お世話になった方です。
いつものように穏やかに、でも、とてもとても深刻に、
今直面している問題について語ってくれました。
「相変わらず公務員給料大幅カット、公立病院への医薬品配給もさらに激減しています。
給料出ない、薬ない。真剣に… 州内の2~3の病院を閉鎖しなければならないと考えているんです…」
(※2014年に中央政府とクルド自治政府の関係悪化でこの状況が始まり、「住民投票を強行した」として、中央政府からの制裁がますます強まっている状況です)
精神科医である局長は、いつも避難民のPTSDのことなどを心配していました。
ヤジディ教徒の女性たちは、性奴隷サバイバーもいます。
恐ろしい光景を目の当たりにした子どもたちがたくさんいます。
家族を失い、何もかも奪われた人たちがいます。
精神科医として今一番の問題は避難民のメンタルヘルスケアだと言います。
「"ISISチルドレン"と呼ばれる赤ちゃんたちはそう多くはなく、養子縁組が進められています。
問題は、小学生以上の軍事行動にも参加していた子どもたち(子ども兵)の洗脳をどう解くか、です。
今はそうした子どもたちはセンターに集められています。
もちろん、欧米NGOのメンタルヘルスケアチームもカウンセラーも入ってはいますが、
地元の専門家が全然足りないのが問題です」
「ISISの恐怖支配下のトラウマに苦しむ人やうつ症状を訴える人は非常に多いです。
なんとか専門家を増やさなければなりません。
この度、有難いことにドイツの大学の協力でドホーク大学に新学部を設置、
専門家養成を本格的に始めることができました。
しかし、これは3年計画。
それでは間に合わないということで、
短期養成プログラムも同時進行中で、現在30名が在籍しています」
ドホーク州だけで72万人以上の避難民をホストしている。
それだけでもすごいことだけれど、
追い込まれたこの状況は、
ドホーク州だけではもうどうにもならないところまで来ていると思いました。
「伝えてください。私たちは国際社会のサポートを必要としています」
局長の切実な訴えでした。
10月10日は”メンタルヘルスデー”。