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「対テロ」は正義?

この半年間、イラクは最悪でした。
ここ数日は日本のテレビでもニュースに取り上げられるようになりました。

けれど、気になることがあります。
「アルカーイダ系過激派組織の残虐画像」ばかりが取り沙汰されて、
またしても事の本質に触れることがないままになってはいないでしょうか?

視聴者は久しぶりに見たイラクの映像に恐怖おののき、
無意識に「対テロ」を支持する流れがつくられている気がします。
イラク政府が公開した空爆映像は、
「対テロ攻撃」として再び国際社会のお墨付きを得ることに成功しているようです。

「アルカーイダ系過激派組織の残虐画像」というのが何度も報道されるなら、
この半年、政府が送ったシーア派民兵がスンニ派市民に対し、
残虐の限りを尽くしたこともテレビで報道してほしい。
この10年、政府が「反テロ法」を使って、
不当逮捕、拷問殺害、処刑、刑務所内レイプなどを行ってきたことも。
テレビで流れた「テロリスト」による"公開処刑"は、
政府が日常的にやってきたことです。

その悲惨さは「政府に不満を持つスンニ派」という言葉では到底説明などできません。

空爆の下では何が起きているのでしょうか。
この半年間、ほぼ毎日、ファルージャ病院から民間人死傷者数の報告が届いています。
手足がちぎれたり、
頭蓋骨が割れたり、
内蔵が飛び出したり、
死傷した子どもたちの写真や映像は痛ましすぎます。
昨年末から6/17現在までにファルージャ病院が受け入れた民間人死傷者は、
負傷者1,675名、死者464名。

インターネットや電話などの通信遮断が続き、
現地と連絡が取れなくなっていたところ、
夕べ、ファルージャの友(妻子と隣国滞在中)から連絡がありました。

「サクラウィーヤ(実家のある町)が毎日イラク軍の攻撃にさらされている。
多くの住宅や店が空爆された。
死傷者も出ている。
僕の12歳の甥っ子も重傷を負った。
家族も含めてほとんど避難した。
移動中に500m先にヘリが墜落、
100m先にハバニヤ空軍基地からの迫撃砲着弾。
人々は路頭に迷ってる。
地獄だ」

穏やかな田舎町にある彼の実家で過ごしたことを思い出します。
家族一人一人の顔が浮かびます。

そして彼はこう続けました。

「いつものようにメディアは真実の一面しか伝えてくれない。
世界がどう動いてもどうにもならないほど、
イラクで今起きていることは深刻だ。
もうなす術はない。
イラクはもう宗派意識が人々を支配している。
誰も子どもたちの未来なんか考えてない。
できることなどもう何もない。
ただ、祈ってほしい。
今私たちが必要なのは祈り。
今この時にイラクを少しでも気にかけてくれた人たちに感謝したい」

あまりに悔しくて涙が出ます。
せめて、彼の言葉とイラクで何が起きていたかを伝えようと思います。

以下、2ヶ月前の4月に「週刊金曜日」に掲載していただいた拙文です。
「対テロ戦争とは何か」を知る一助にしていただければ幸いです。

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by nao-takato | 2014-06-18 15:51 | イラク全体

リアルタイムでイラクの今をお知らせする為の公開日記


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