人気ブログランキング | 話題のタグを見る

6月12日 本当の「敵」は私たちのすぐ傍にいる。

6月12日 本当の「敵」は私たちのすぐ傍にいる。_b0006916_714362.jpg5月19日。快晴。ユニオンスクエアでは、愛ちゃん(今回最年少で参加のイホネットボランティア)とさーや(イホネットのまとめ役)が50枚近くの写真を、公園のど真ん中に位置する柵にヒモでくくりつけた。柵の中央には馬に乗った人の銅像(周囲の人に聞いてみたがわからなかった)があり、そのまま空を見上げると、アメリカの国旗がはためいていた。ユニオンスクエアにはいろんな人が地べたや芝生の上に座っていて、いろんな人が行き交っている。かと思えば、フリスビーをする人、激しく踊る人、訴える人…人、人、人…。そして、そんな喧騒の中に音も立てずにひっそりと公園内に黙ったまま主張し続ける人がいた。

6月12日 本当の「敵」は私たちのすぐ傍にいる。_b0006916_7204341.jpg非暴力を貫いたインド独立の父、マハトマ・ガンディージーにここでお会いできるとは!ガンディージーの銅像は、今にも歩き出しそうに見えた。それは「歩みをやめない」、「あきらめない」という彼の強い意志が今も息づいているということだろう。

ニュースクール大学大学院のメイン会場と、ユニオンスクエアのサブ会場は歩いて5分の距離だったので、みんなで交代しながらメッセージを配ったり、説明ガイドになったりした。途中のカフェでコーヒーをテイクアウト、片手に持って歩いて「ニューヨーカー」気分。いつもより胸を張って歩いていたかも。ここでは若く見られることはほとんど「損」だから、ちょっと大きめの態度がちょうどいいくらい。若き日の苦い経験があるからねぇ。そのくらいの余裕をもった態度で行かないと、米国市民はマジメに話も聞いてくれないよって、お互いに発破かけあいながら、闊歩した。

アメリカに来て一番驚いたのが、「劣化ウラン弾」の知名度が驚異的に低いことだ。実は、このイラク戦争帰還兵の中にも深刻な影響が現れ始めている。たとえば、以前にもここで書いたことがあるが、帰国して授かった赤ちゃんに指がなく、父親である元兵士の尿からは劣化ウランが検出されて話題となった。これに関してはこのたびのイラクホープネットワークNY企画の前半で、「劣化ウラン廃絶キャンペーン」のメンバーも兼ねる方々が、直接そういう問題を抱える帰還兵にインタビューをしている。(詳しくは6月26日の公開座談会「アメリカを語る」で紹介される予定)

ニューヨーク市民はそれでも関心が高い方だと聞くのだが、どうもトンチンカンな反応が返ってきたりする。「イランの核開発ってひどいわね」とか、「米軍が劣化ウラン弾を使ってるですって!?そんなわけないわ。劣化ウラン弾は国際法で禁止されてるのよ。アメリカが法を破るはずないわ」とか、「イラクの武装勢力って、ひどい兵器を使うのね」とか、一瞬呆気にとられる発言が飛び出すのである。「いえいえ、こんな高価な兵器、武装勢力は買えません(苦笑)」と答えるのだが、説明に苦慮しっぱなしであった。なんせ、名前が「劣化」なんてついているものだから、「無害」だと思われがちなのである。なんでこんなファジーな名前がついてんだ!?と頭の中で考えていたら、思わず「劣化ウラン弾は劣化していません!」と口走ってしまった。何が言いたかったかと言うと、劣化したウランを使っていても放射性物質であることに何ら変わりはないということなのだ。劣化ウランの被爆というのは、見えない上に無臭で、簡単に空気、食べ物から体内に入り、入ったら最後45億年は体内に留まり、放射能を出し続けるということだ。ほぼ永久に不滅。もし、ガンなどの病気が発症し、仮にそのガンを克服しても体内に放射性物質が蓄積しているから、また同じ病気を繰り返すというわけ。しかも、遺伝子を傷つけるらしく、通常のガンと違って、家族内で同じガンにかかる可能性がやたらと高いという大変迷惑な代物なのである。と、ここまでは素人の私が知っている基礎知識。(より詳しくは「劣化ウラン廃絶キャンペーン」はhttp://www.cadu-jp.org/contents.html)

6月12日 本当の「敵」は私たちのすぐ傍にいる。_b0006916_87752.jpg劣化ウラン廃絶キャンペーンのメンバーでもある伊藤女史もアメリカ市民にレクチャーを施す。劣化ウランが人体に及ぼす影響は、実際のところまだ因果関係を特定されていないのだが、奇形が激増しているのは事実。深刻な薬不足で命を落とす子どもの数が半端じゃないことも事実。湾岸戦争以降に激増していることも事実。湾岸戦争以降、米兵にも同じような症状が出ていることも事実。壮絶な奇形の子どもの写真の前に佇んだ湾岸戦争帰還兵は、「僕の子どもは神のご加護で五体満足だった。戦争なんて絶対にしちゃいけないんだ。戦争に行ってみて、それだけははっきり言えるよ。伝えに来てくれてありがとう」と言って去っていった。

写真を見に来た人たちは、とりあえず「イラクの実情を何も知らなかった」ということだけは確実に知ることになったようだ。また、イラクには恐ろしいテロリストばかりが住んでいると本気で思っている人たちにとっては、子どもたちの笑顔は強烈な印象を与えたらしい。食い入るように写真を見つめている人が多かった。私たちはとにかく、その姿を見守り、そして、「イラクからのメッセージを受け取ってください」とチラシを渡した。私は、自分で撮影したファルージャの子どもたちと米兵に撃たれた青年の写真の前で、「なぜイラクで抵抗が始まったか?」を一人一人に説明し続けた。敵は、アメリカ人でもイラク人でもない。本当の敵は私たちのすぐ傍にいる「無知」なのだ。
by nao-takato | 2005-06-13 08:41 | 9条/対話

リアルタイムでイラクの今をお知らせする為の公開日記


by nao-takato