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癒えない傷。

今日伺ったイラク難民の患者さんは、
結腸を全部取ってしまっていて、
人工肛門をつけている男性。
事前にサイズを聞いたら「今は57mmを使っている」と言うので、
今私の手元にある人工肛門バッグ(38mm)は合わないなぁと思ったが、
漏れたりいろいろ苦労しているみたいだったので、
一度伺ってみることにした。
とりあえず、38mmのサンプルも持っていった。

8月15日に小腸を20cm切除する手術をしたそうで、
傷口はまだ完治しておらず、痛がっていた。
ストーマを見せてもらったら、
痛そうでも、かゆそうでもないし、
コンディションは良さそう。
ただ、どう見ても人工肛門のサイズが合っていないように思った。
ストーマのサイズは32mm程度なのに、
面板のサイズ57mm。
漏れる原因はこれだなと思った。
サンプルとして持っていった38mmを試しにつけてもらい、
様子を見てもらうことにした。

「イラク戦争前のイラクは、
人工肛門バッグも手術も全部無料だったんだけどね…」
と奥さんが言う。
ヨルダンで暮らす今は、
医療費が家計を圧迫している。
「夫は精神的にかなりまいっている」
と打ち明ける彼女の表情も相当疲れていた。

バグダッドの治安が「地獄よりひどい」と言われた2006年、
夫妻はヨルダンにやって来た。
息子が銃撃を受けて右目を負傷したり、
脅迫や襲撃、いろいろ大変な目に遭ったようだ。
奥さんの目に涙…。

通訳で一緒に来てくれたイラク人の女性も、
自分の体験を思い出して目を潤ませながら語り出した。
いつも笑顔で元気でも、
一瞬でその時に引き戻されてしまう。
今でも…。
震える彼女の背中をさすることしかできなかった。

イラク戦争から10年が経とうとしている。
人々の心の傷は深い。

あの戦争も、この紛争も、
あの内戦も、この宗派対立も、
あの分断も、この革命も、
癒えない傷を増やすばかり。
by nao-takato | 2012-09-04 05:14 | 支援/プロジェクト

リアルタイムでイラクの今をお知らせする為の公開日記


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